「保守・運営」について考える

2012.10.26 | 考える。
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こんにちは。WPD-Oliveです!今日も元気です!

制作だけじゃなく「保守・運用」もやってみようぜ!

ひとつのウェブサイトを構築して、それで終わりにすることなく、その後もクライアントとお付き合いしていく「保守・運用」。

僕はこれまで制作をメインにしてやってきましたが、今後のことを考えると「保守・運用」についても自分のドメインとしてやっていきたいと考えるようになって来ました。

そこで、今回は、僕の考える「保守・運用」について書きたいと思います。

保守・運用をしていくことの制作者にとってのメリット

スキル向上のメリット

制作を続けていると、決められたものを作る能力はしだいしだいに上がっていきます。やったことがないことでも、調べたり新たに開発したりしていくうちに、制作分野の守備範囲が広くなっていくイメージですね。

さて、制作をするときには、(=企画やワイヤーフレームの作成、デザイン、htmlへの構造化、CMSの導入を行う時には、)それまでの経験や勉強の結果を踏まえて最適なものを作っていきますよね?

それを考えている時・迷った時の判断基準だったり、作ろうとしているもののクオリティに対する評価の基準というものは、どこからやってくるのでしょう?その根拠って、いったいなんなんです?基準はどのようにして作られて、どのように高めていくものなのでしょうか?客観的で信用できるものであると、どうして言えるのでしょうか?

その答えが、「保守・運用」の経験の中に(も)あるのです。

作ったものが、その後どうなって、どうお客さんのメリットにつながったのか、どんな問題が起きたのか、どのように改善したのか、ということが次の制作にも生きるようになり、ウェブやインターネットを使ったビジネスについての理解を深めていくことになります。

営業的なメリット

私は個人で仕事をしていますが、常に心配なのが、次のお仕事です。

基本的に電話や訪問などの営業活動のようなことはせず、日々勉強会に参加したり、WordPressのコミュニティのなかで活動していく中で出会う方々からお声がけをいただいたり、大学時代の友人からご紹介いただいたり、以前に仕事をした方からご紹介いただいたりとか。

ありがたいです。が、これはある意味不安です。いただく仕事の予定が立たない、いつかプッツリと仕事が無くなる可能性がある。

そこで、ひとつの仕事を制作という短期的な一回きりの仕事として終わらせることなく、その後も続けていくことで、仕事の継続性についての目処が立つようになっていきます。あとに述べるように、定期的な収入や、機能改善等の追加のお仕事に繋がる可能性も高いです。

お金のメリット

たとえば、以下のような場合を考えてみましょう。個人を想定しています。

  • 普段の仕事の平均単価が50万円
  • 年間に15本の仕事をしている
  • 納品して終わりにしてしまうのではなく、「保守・運用」も提案している
  • 1/3 のケースで「保守・運用」をやることになる
  • 保守・運用費は平均して月額2万円

この場合、1年間が終わってみると、2万円 * 5クライアント = 10万円が毎月入ってくることになります。年間で120万円。3年続けると月額30万円、年間360万円となります。

相当順調に増えている、かなり都合のよい想定(笑)の数字ですが、営業活動や時間がものすごくかかる制作の作業がなくても毎月10万円が入ってくることになると、精神的にもキャッシュ・フロー的にも嬉しいですね。僕は、最初に月額2万円の保守をやれることになったとき、やたらと安心したのを覚えています。ベースとなる収入として位置づけられるとよいですね。

「保守・運用」って、どんなこと?

「保守・運用」は、maintenance, operation のことですね。その具体的な内容って、どんなでしょう?

一般的に「保守」は公開終了後のバグ・不具合の修正など、「運用」は公開後にそのサイトやシステムを利用する際に発生する作業などで、日常的に実施していくものという理解をしていれば大丈夫だと思います。

そして保守・運用は、インフラ管理からコンテンツ更新、アクセス解析やリファクタリング、デザインの調整やソーシャルメディアへの対応など、いろいろな分野にわたっていて、ひとくちで済ませるわけにはいきません。中には、とても手のかかる作業もあります。「え?これって保守・運用に入るの?」「これは新規で別途見積もりの方がいいんじゃない?」というものもあるでしょう。人によっては技術的にできないこともあります(たとえば私個人であれば、サーバ周りの作業は1人で請けられません)。

「保守・運用」を分野別に分類してみる

仕事の内容の面から、ざっくりと分けてみます。

サーバなどインフラに関する保守・運用

サーバに負荷がかかっていないか、そもそもちゃんと動いているか、php や apache にセキュリティ面での脆弱性が発見されて発表されていないか、などをウォッチして、問題があれば対処するという仕事です。サイトデータのバックアップも、サーバのレイヤーで行うことができます。

  • サーバの php / mysql などのバージョンアップ
  • サーバの死活監視
  • ログなどを定期的にチェックして、問題が起こっていないかどうかを監視
  • セキュリティ情報を日常から追いかけて、問題があれば対処する
  • サイトのデータのバックアップ
  • サーバやドメインの契約や期限についての管理など

このあたりは苦手なウェブ制作者の方も多いのではないでしょうか。あるいはレンタルサーバに設置されている場合には、必要がない(手出しできない)分野でもあるかもしれません。

規模が大きく、シンプルなウェブサイトを超えてシステムが複雑になってくると必要になります。

プログラム・アプリなどのシステムの保守・運用

サーバの上で動いているシステムの面倒を見る部分です。制作能力プラスαで対処可能なことが多いです。

  • WordPress 本体のバージョンアップ
  • WordPress のプラグインのバージョンアップ
  • 公開後に見つかったバグや不具合を修正する
  • 公開後もコードを改善するなどして、処理スピードをあげるなどの調整をする
  • サイトのデータのバックアップ

WordPressのサイトであれば、本体やプラグインのアップデートなどはここに分類しておきます。

アップデートは管理画面からのボタンクリックで済むとはいうものの、アップデートしてもこれまで通りに動くかどうかを確認しなくてはならないので、ものすごく大変です。本番環境と同じ環境を用意して、テストを行います。

ものすごい手間がかかるので、やりたがらない制作者が多く、作ったら作りっぱなしになっているWordPressのサイトは、(みんな言わないでいるだけで)世界中に山とあります。WordPress を導入する際に、クライアントにリスクを含めてきちんと説明する必要があります。僕も、説明しきれなかったり予算的に見合わなくなってしまった場合には、そのままになってしまっています。

また、バグや不具合が見つかった場合の修正作業などもここに入れます。バックアップについても、WordPressであればこのレイヤーで処理することができます。十分な金額が頂けるのであれば、コードを改善して高速化やメンテナンス性を上げ続ける作業も入れられます。

コンテンツに関する保守・運用

システムの上に載っている、コンテンツ自体に関する作業です。

  • コンテンツの制作(あるいはコーディング)
  • コンテンツのコーディング
  • バナーの制作
  • キャンペーンの実施

などが、これにあたります。クライアントとの打合せやキャンペーンの実施など、考えたりページを増やしたりする作業になります。このあたりから、そのサイトに必要な中身を作る能力という、制作とは別の能力を求められます。

サイト改善に関わる保守・運用

動いているサイトの様子やクライアントのビジネスの進捗、競合の変化に応じてサイトを変更していく作業です。この辺りになってくると、「保守」的な色合いは薄くなりバリバリの運用と言えます。また、コンサルティング的な側面が強くなってきて、制作の技術だけではなくアクセス解析やウェブマーケティングといった技能やビジネスについての理解・提案力が必要です。

  • アクセスを解析して、サイトを随時改善していく
  • ABテストなどを実施して、サイトを随時改善していく
  • クライアントの競合の動きを見ながらサイトを改善していく
  • クライアントと打合せを実施して、その結果をサイトに反映していく
  • クライアントから、いろいろな質問が来て色々教えてあげる。時には少し手を動かしてみる

制作体制に関わる保守・運用

人・組織に関わる部分です。

CMSの導入をしている場合、お客さんが自分たちでコンテンツを更新していくことになりますが、これが簡単ではありません。そもそも使い方が難しいというところから始まります。はじめのうちは、下書きで保存されているものを修正してあげたり、一緒に作ってみたり。

サイト内にブログがある場合には、そのアクセスが見えるようにしてあげたり、ブログを書く目的や読んでもらいたいターゲットについて話しあったり、日常的に更新できる体制づくりについて考えたりします。

組織として更新する場合には、専門の担当者を設けてもらうなど、人間・組織に関わる部分なので、担当者レベルを超えて組織に関わっていくことにもなります。一人のビジネスマンとして内部を変えてもらうに足る信頼を勝ち取る必要があります。

でも、お高いんでしょう?

はい。

これまで、色々なレベル・種類の保守・運用について見てきました。ぶっちゃけた感想でいえば

「超大変( ̄▽ ̄;)!!ガーン」

「こんなにやってたら他の仕事できないじゃん(´・_・`)」

「あんた(WPD-Olive)、ほんとにこれ全部やってるわけ?(゚ー゚)y-.。o○」

といったところではないでしょうか?

正直、その通りでこれらのことを全部やっていたら、いくつもクライアントを同時並行で持っていたりすることはできません。ある種理想論であります。

そこで、以下では、実際にはどのような保守が考えられるのか僕の実体験を通して考えたいと思います。金額も書いてみましたが、それこそケースバイケースなので、あしからず。

名ばかり型

ほとんど何もしないけれども、月額5千円から1万円などの小さな金額。
自動のバックアップをとっていたり、時々寄せられる質問などにお答えしたり、htmlレベルで可能な超簡単な修正作業をやってあげる。

安心料的なものかもしれません。実際に何かが起った場合には、この金額内でやってあげられないことがほとんどで、実はけっこう難しい。

サーバ・ドメイン料型

僕はやったことがないのですが、周りにはやっている方もいらっしゃいます。こちらも安心料のようなプランであり、「保守・運用」というとNGだけど「サーバなどの毎月の提供料です」というと通ることがあるものです。

サーバ費用やドメインの管理料として月額3000円〜4万円などのことが多いです。実際にかかっている原価にいくらか乗せて、毎月請求する形です。

インターネットを利用しないビジネスをしている中小企業のウェブサイトに対して、レンタルサーバなどの再販で行われていたりすることが多く、「更新が必要な場合に連絡していただければ対応します」というのがセットになっているようです。必然的にこちらの作業についての技術的・作業負荷的な理解は、(よくも悪くも)してもらえていないことになります。

コンテンツ更新型

数千円〜。

月に5件までブログ記事などのコンテンツを更新するところを担当します。こうした更新がある場合、 WordPress などの CMS は、制作者にとっても役に立ってくれますね。

相談しながら頑張りましょう型

上記の「名ばかり型」を、もっと丁寧にしたもの。私はこれが多いです。

単価としては、2万円から10万円。規模がある程度大きいサイト(制作時の単価が100万円以上)で、内容はサーバ周りからコンテンツ制作や会議出席までにわたります。このあたりからは、お客様の会社内で「このお金、必要?」という疑問が吹き出し、何もしていないと保守の話はなくなります。

サイトに起こっている問題を、技術的にも原因や解決策を含めて丁寧に説明します。また、なんらかの提案を持って行くことも大事で、現状の認識と改善後の展望などを説明し、スケジューリングと進行管理を行います。簡易な社内ディレクター的な立ち位置と言えます。

コンサルティング込の保守

5万円〜20万円、またはそれ以上。

かなりの労力をかけます。社内的にも存在が認知されます。クライアントのビジネスに対する高い理解度と提案力・実行力が求められます。こちらからアクションを起こして、アクセスの解析や競合の分析までを行なって、ウェブ戦略の専門家としてクライアントのビジネスに積極的に関っていくものです。また、一人でできるレベルを超えてくるので、数ヶ月単位の改善策にチームで取り組んでいく形。僕はぶっちゃけやったことありません。今後の目標です。

ひとつひとつの課題が大きくなってくるので、ここまで来るとそもそも保守・運用を超えて別途お見積もりの上ひとつひとつ実施、というカタチの方がやっぱり合っているのかもしれません。

僕の経験でも、上記の「相談しながら頑張りましょう型」のお付き合いの中で、大きなプロジェクトが立ちあがり、お見積もり→実施の流れになることが少なからずあります。

「保守・運用」の提案にあたって

さて、「保守・運用」の分類が分かったところで、実際にクライアントに提示する時にはどのようにしたらよいのでしょう。

まずは自分の目指すポジションを考えよう

何より大事なのは、自分は何をクライアントに提供・販売したいのか、年単位で自分の今後の展開を考えた時に、どう成長・変化していきたいのか、どうやってビジネスを展開していくつもりなのか、ということをじっくり考えることだと思います。

たとえば、、、

人によっては、他の制作者と比べた時により高い制作スキルを磨き続けるというスタンスかもしれません。その場合には、少なくない時間を取られる保守・運用は受けず、制作のみを行いその単価を上げることに注力すべきでしょう。

他の誰かさんは、インフラについての経験・知識を売りにすることで、サーバの構築から監視までを受け持つポジションになるかもしれません。インフラ込みの提案・制作が必要とされる種類のウェブサイトに関わっていくことになります。そういう業界・業種・お客さんとのつながりを深めていくことでしょう。

そこまでのインフラを必要としないお客さんが多い場合には、各種レンタルサーバの違いにも目を向けて知識を深めることで、プロジェクトに適したサーバを紹介してあげるスキルを高めることになると思います。そこでも保守・運用を受けるということにするならば、デザイン・マメさ・解析などなどインフラ以外の何か別の価値と組み合わせるような提案になります。

また別の誰かは、「植木屋さんのように手入れするスタイル」と言っていました。これは、僕も近いものがあります。小さい改善を加え続けたり、時々植木の位置を大きく変えてみたりという作業を通して、常にサイトを改善し続けることで価値を提供します。アクセス解析や、ソーシャルメディアへのシステム的な対応など、新しいトレンドにも反応しながらその時々に必要な施策を絶えず行なっていくお付き合い力が重要になります。

アクセス解析の力に特化することによって、売上や露出の向上に直結する施策を提案し続ける、というものもあります。アクセス解析は深い分野で、かなりの勉強や経験が必要になりますが、僕はこの分野に最近興味が出てきています。

このように、自分はどの分野が得意なのか、どの道を進むのか、何が自分の武器なのかを見定めることが重要です。

信頼関係を築く

保守・運用に限りませんが、クライアントの信頼を勝ち取ることが第一です。

単純にデザインや機能を実現するという意味だけ制作能力のみではなく、ウェブ・クライアント自身・ビジネスについての理解力があり、クライアントにとって今後も必要な人間であり、付き合い続ける価値があるということを理解してもらう、ということです。

アピールのチャンスは、おそらく制作の現場にあります。なぜこのデザインなのか、なぜこのコンテンツなのか、なぜこの機能なのかを丁寧に説明したり、制作の前の段階で相手が想定しきれていないチャンスやリスクを提示してあげたり、日々のコミュニケーションの中で自分の勝ちをプレゼンテーションしていきましょう。

通ってみる、即レスする

この2つは僕が気をつけていることです。

1つ目の「通ってみる」ですが、実際に顔を見せてお客さんと話をすることが大事です。相手の表情を見ながら心配ごとが無さそうかどうかを確認したり、画面を一緒に見ながら説明したり、ランチに行ってみたり、直接会うことでできることは山ほどあります。たとえば、実際の作業とは関係のない情報を提供するというのも、面白い人だな、と思ってもらうために効果があることです。が、こういうことも実際に会わないと機会が無いですね。

2つ目の「即レス」ですが、メールや電話で何らかの依頼が入った時に、簡単なことであればその瞬間にすぐに直して返事をする。世の中には、制作者の反応が遅くて困っているクライアントがたくさんいるものです。html の一部をコメントアウトするだけで済んでしまう作業でも、頼んだその日に完了するとものすごく喜ばれることもあります。時間がかかるときでも、返事だけはすぐにするようにするといいと思います。難しいですが頑張りましょう。

直請けにこだわってみる

代理店など別の会社や、他の人の仕事をサポートするのは、営業のコストやトラブル回避のことを考えるととてもありがたいものです。

が、間に一社/一者が挟まっていることで、直接保守・運用の契約をすることはできなくなります。直接連絡をしないというパターンであればそもそも提案もできません。スタートラインに立つための大事な条件の一つです。

まとめ:「保守・運用」考から見えてくるもの

いかがでしたか?

「保守・運用」を盛り込めば、「毎月少しずつだけどお金が入ってきて安心だねo(^o^)o」という気持ちと、「これ、やろうと思ったらリソース全然足りないし、お客さんに理解してもらうの死ぬほど大変だよね(^_^;)」という気持ちの間で揺れ動いていただけたのではないでしょうか?

この記事を書くにあたって、 WP-D.org の他の制作者・ディレクターと話をしてみた時にも「そうなんだよね」「要はバランス」「保守するべきか、せざるべきか。それが問題だ」という言葉があがりました。あと、「理解してもらうのすごく大変」という声も。なんか、「永遠の課題感」がそこはかとなく漂いましたw

「ウェブサイトに関わるお仕事」というと、すぐにデザイン・ディレクション・コーディング・プログラミング、というゼロからイチを作ることに頭がいってしまうのですが、クライアントにとっては、それは全体のビジネスのうちのほんの一部。そこを一歩も二歩も踏み込んで関わり続ける、という能力と覚悟と説明力と気概が必要なのです。

技能面でも、(もし今保守・運用をできていないのであれば)ジャンプが必要だと思われたのではないでしょうか。

僕としては、今後もウェブの世界に関わっていくものとして、技術的なキャッチアップもやって行きたいと思っていますが、こうした、ビジネスやコンテンツ、人間や組織に関わってバリューを出していく、ということについても考えていこう、と思っている次第です。

みなさんは、どうなんでしょう?ご意見をお寄せください。